2014/10/06

消費者が納得するトマトの値段-僕の小規模な嘆きその47

・謎の事務所の話
自分が住んでいるマンションの1階には謎の空間があった。

店用のスペースかと思っていたが、店をやるには狭すぎる。
事務所にしてはこじんまりしている。
いったいどこのだれがこんなところを借りるんだろうと思っていた。

4月になり、家具やらパソコンやらが持ち込まれた。
配置を見るあたり、どうやら事務所になるらしかった。

だが、何の事務所かは全く分からなかった。
看板なんて掲示されていないし、ポストの名前もない。
ちらっと中身を覗いてもファイルやオフィス機器ばかりで、何をやっているのか想像できない。

さらに謎なのが、常時人がいる事務所ではないところだった。
朝から夕方まで誰かが詰めている様子は皆無で
時々人が入ったかと思うと、女性ばかり、それも子連れもいる。
ますますわからなくなった。

9月になり、ようやく正体が分かった。
この事務所で近々野菜の販売会をやるという張り紙が事務所の前に貼ってあった。
内容を見ると、非営利でやっている食育関係の団体らしい。
母親っぽい年齢の女性たちがいっぱいいる理由もようやく分かった。

そしてイベント当日。
機会があれば入ろうと思ったが、結局入れなかった。
だから一体何をしていたか、分からない。

後日、ガラス窓のすき間からちらっと見えた「トマト1個250円」
単純に考えれば高すぎる、でもこだわりぬいたトマトなら妥当、
高いのか安いのかよくわからない。

未だにあの事務所は謎だ。


・工場の片隅で読書をする話
昼休みの1時間、最初の25分は食堂で弁当を食べ、トイレを済ませた後
残りのおよそ30分は薄暗い工場の片隅に座って読書をする。
最初は工場と食堂を結ぶ階段の途中で時間までスマホをいじっていたが、
そんなに見たくないサイトを見ながら暇つぶしするのが退屈で、本を持ってきて読書をするようになった。

読むのは文庫本で短編小説が収録されているもの。
ズボンのポケットに入るし、30分位なら一編くらい読みきれるからだ。

作家は最初は重松清ばかり読んでいた。
短編集も多いし、元々好きな作家だったということもある。
そのうち東野圭吾だとか朱川湊人とか別の作家の本も読むようになった。
昼休みの工場にはほとんど人が入らないので、誰の目も気にせず本を読める。
昼休みのちょっとした楽しみになりつつある。

それでも人の目は気になる。
工場で読書をしているなんて、自分だけだろう。
他の人達はバラバラに行動している(タバコを吸ったり、車の中で過ごしたり、工場に入っても寝ていたりスマホをいじっていたり)し、就業規則を読んでも休憩時間は敷地外の外出を除いて何をしてもいいと書いてある。
だから自分が読書をするのは特に問題はないと思うが、その姿はなんだか見られたくない。
やっぱり彼は別の世界の人だと誤解されたくない。本を読んでいるくらいで。

だからズボンのポケットの奥まったところに文庫本は入れるようにしている。
ただ最近、仕事場の棚にスマホを置かせてもらえるようになったので、そこにも
文庫本を入れられるようにもなった。
そこでもあまり見られたくないように置きたい。


・印象の話
先日クマと会った時、
「トレンディドラマに出てくる人みたい」
と言われた。
どうやら、今の自分の髪型が、クマの中のトレンディドラマに出てくる人のイメージに
重なったらしい。

その後鏡を見る。
トレンディドラマなのか・・・?と思いつつ、誰かに似ているとふと思う。
自分の父親だ。
いつの間に父親に似るほど老けたのかと、鏡を見る。
いつもよりも長めに見ていた気がする。





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