2015/07/05

100年前の未来予測を検証-僕の小規模な嘆きその60

・1920年の未来予測がかなり当たっている話
ネット上をうろついていたら1920年に100年後の2020年の未来予測をしていたというサイトの記事を見つけた。
これが95年後からみたらかなり当たっていたので文章を転載し、ちょっと検証してみた。

この予言は1920年『日本及日本人』という雑誌に掲載された、当時の有名人たちの思う100年後(2020年)の日本を語ってもらったものである。
彼らの中に安川佐次郎なる実業家がおり、他の人間が曖昧な回答をする中でかなり具体的な回答をしている。ちなみにこの人物の素性は検索しても出てこない。一時の成金だったのか、ペンネームで投稿したのか、よくわからない。


<皇室>
 ●皇室の離宮は1つ2つを除いて民間に下付され、公園になる

→これは大当たり。今の皇室の離宮は2つ。1920年の10から数を減らし、多くが公園になった。その中には二条城や名古屋城など、こんなところも離宮だったのと驚くようなものもある。
 ●両陛下が民間の公会堂などに行幸啓される

→現在の皇室はイベント、劇場、被災地と様々ところに出向く。1920年の人間が「会いに行ける皇族」に変貌したことを知ったらびっくりするだろう。
 ●宮中顧問官、錦鶏間祗候などの役職が廃止

宮中顧問官、錦鶏間祗候は政府に貢献した人物に宛てがわれた役職(実質お飾り)。戦後に廃止された。
 ●四民平等が徹底され、皇族が旧特殊部落で慈愛の言葉を発せられる。爵位なども全廃

→法の下の平等が日本国憲法に明記されたことで、四民平等もなくなったし、爵位もなくなった。旧特殊部落に皇族が行ったかどうかは分からないが、災害の被災地を訪ねた時被災者の目線と同じになるように話しかけるなど、皇族の行動はこの100年でぐっと変わったはずだ。

<軍、警察>
 ●巡査の帯剣が廃止され、軍人も平素は帯剣しなくなる

→軍人も警察官も帯剣はしていない。警棒は持ってはいるけど。
 ●徴兵制度が廃止される

→今の日本に徴兵制度はない(徴兵制度を復活させようとする議論はあるが・・・)
 ●陸軍省、海軍省、参謀本部は廃止され、軍務省に統一される

→終戦後に陸軍省、海軍省、参謀本部は廃止された。軍事を統括する省庁が統合されたという点では防衛省が誕生した。
 ●陸軍幼年学校、士官学校などが廃止され、帝国大学に戦術科が置かれる

→自衛隊にはそれぞれ専門の教育機関が残っており、大学には戦術を研究する学科は存在しない。未来そうなるとしても2020年までにそうなるとは思えない。
 ●海軍の巨艦主義は消え、陸海とも航空部隊が編成され、師団数が減る。消えた師団跡地は公園や文化施設に

→海軍の巨艦主義は戦艦大和で終わってしまった。陸軍海軍に航空隊は編成されたが、現代では航空自衛隊が主に航空戦力を担っている。1920年代の規模から比べたら師団数は減っている。師団跡地は予言通り多くが公園や文化施設に生まれ変わっていてかつてそこに軍隊があったという痕跡は残っていない。

<国家形態>
 ●家長制度は廃され、18歳で男女とも選挙権を得る

→現民法に家長制度は存在しない。18歳の選挙権はまだないが議論は進んでいるので2020年には達成されているだろう。なお、男女とも選挙権はすでに得ている。
 ●貴族院が廃止され、一院制の下、議員は毎年改選される

→貴族院は廃止されたが、一院制と毎年改選は実現されていない。
 ●総理大臣は「総長」、大臣は「省長」と呼ばれ、2人の女性省長がいる

→呼び名の変更はないが、二人以上の女性大臣がいるのも珍しくなくなった。
 ●男女とも議員は人格が向上しており、議場は静粛である

→これは残念ながら達成されていない。2020年になっても達成されているのは難しいだろう。
 ●府県知事は廃止され、市長・町長・村長・戸長が選挙で選ばれる

→知事は存続している。ただ当時の任命型の府県知事という点では廃止されている。そして知事、市町村長は選挙で選ばれている。

<社会制度>
 ●死刑は廃止される

→死刑は存続している。2020年も死刑は存続されるだろう。
 ●土地は公有となる

→土地は私有のまま。
 ●裁判官は公選される

→裁判官は公選(選挙で選ばれること)されていない。
 ●枢密院は廃止される

→この予言の27年後の1947年に廃止された。
 ●出産率が低下し、育児・救民施設が全国に200カ所できる

→出産率の低下は見事に当たり、育児・救民施設に相当する児童養護施設、無料低額宿泊所は全国に200ヶ所は余裕で超えている。
 ●政府の専売事業や鉄道院は廃止され、官業は試験場と郵便などごくわずかになる

→専売事業と鉄道院(当時)は1980年代に民営化された。試験場は国や自治体が運営しているが郵便は2000年代に民営化された。予言以上に民営化されたといえるだろう。
 ●市町村に教示所ができ、犯罪が激減。ただし、世界一だった日本の監獄の質は悪化する

→教示所は存在しない。人口10万人あたりの発生率でいうとそこまで激減しているわけではない。
世界一と言われていた1920年代の監獄の状況はわからないが、刑務所の過密化や受刑者の高齢化等で刑務所の質は悪化しているのは予言通り。

<税金・財政>
 ●すべての国税は廃止され、紳士税という人頭税と、関税のみ残る

→国税はどんどん増え続けて20種類以上もある。2020年までにあと1種類くらい増えそうな気がする。
 ●地方税は、種類が減るがそのまま残存

→地方税もちゃんと残っている。収める対象も市町村と都道府県に分かれて、国税よりも種類が多くなっている。
 ●住宅以外の遺産相続は禁止される

→これは実現されていない。2020年になっても実現されていないだろう。
 ●国家財政は5億円を超えないが、文化公債が発行され、債務が150億円に達する

→当時の物価のことも考えないといけないが、前半は国家財政が膨らみまくっているので外れている。当時は今のように社会保障が行き渡るとは思っていなかっただろうから、そのくらいの財政規模だろうと見積もっていたのかもしれない。後半は半分外れていて、半分当たっている。2020年もおそらく赤字国債は発行され続け、債務はどんどん増えているだろう。
 ●大規模な軍縮により、国富が増大し、対外債権は350億円

→軍縮というか別の要因で国富は増え続け、いまや日本の対外債権は366兆円を超えているそうだ。桁が違う。でも借金大国と言われ続けているから366兆円の対外債権を持っていると言っても実感が薄いのが正直なところ。

<産業・技術>
 ●海草や植物から糸を作る会社が20を越える

→海草から糸を作る会社はあるかどうかわからないが、植物から糸を作る会社はたくさんあるだろう。こういう予言をしたのはおそらく1920年当時は製糸・紡績業が日本の主力産業で、外国から原料を輸入していたことが関係しているのではないだろうか。
 ●東京〜下関間に空中電車が架設される

→空中電車ではないが東京と新下関間には新幹線が通っている。高架を走る新幹線を「空中電車」と言うのならば当たっていることになるが…
 ●関門海峡、津軽海峡に海中トンネルとロープウェーが作られる

→青函トンネルと関門トンネルは作られたが、ロープウェーは作られていない。作られる見込みもないだろう。
 ●琵琶湖の沿岸が埋め立てられ、水害が増える

→多少埋め立てはしたかもしれないが、埋め立てが原因の水害は起きていないんじゃないだろうか。ちなみに水害は戦後大体十数年起きに起こっていたが最近20年では起こっていない。1920年からみて水害が増えているわけではないんじゃないだろうか。
 ●日本郵船と大阪商船が合併し、航空会社になる

→日本郵船はそのまま存続、大阪商船は戦後合併し商船三井と名前が変わったが両社は合併することなく存続している。今後5年間でどうなるかはわからないが、航空会社になることはないだろう。

<文化>
 ●幼稚園と中学が廃止され、10年で卒業し、実務に就く。手工と漢学は廃止

→中学というのは今で言う高校のこと。つまり今の教育制度でいうところの義務教育だけ受けてもらってそれからすぐ就職してもらおうということなんだろう。そして漢学(今で言う古典)、手工(今の小学校の図画工作、中学校の技術に相当する)は廃止するという。この予言は外れている。
 ●教科書はエスペラントで書かれ、全国共通のものと地域限定版に分かれる

→エスペラントの熱が高い時代だったのだろう。残念ながらエスペラントの学習熱は当時と比べたらだいぶ落ちてしまった。
 ●新聞から講談ものが消え、新聞社主催で「漢字追弔祭」が行われる

→この時代には講談ものがたくさんあったのだろう。講談ものは全く無くなったわけではないと思うが激減はしていると思う。新聞は相変わらず漢字がたくさん使われている。当時日本の植民地だった朝鮮では今は漢字がほとんど使われていないようなので、そういうところでは「漢字追弔祭」が行われても不思議ではないだろう。
 ●新聞は朝夕4ページとなり、雑誌も薄いものが歓迎される

→新聞のページは相変わらず多い。薄い雑誌は増えたけど、かといって分厚い雑誌も増えた。薄いものが総じて歓迎されているわけではないと思う。
 ●衣服は男女とも筒袖丸袴になる

→筒袖丸袴が洋服を指しているなら大当たりだ。洋服を着ていない人を探すのが難しいくらい町中は洋服をきた人であふれている。筒もない、袴の形態も有さない洋服もあるくらいだ。
 ●女性学者や女性発明家が著しく増え、男を圧倒

→1920年当時から比べたら数は著しく増えているが、男を圧倒するほどではない。同数くらいになるのも(大雑把に)50年くらいかかりそうだし、圧倒するとなるとあと100年位必要な気がする。
 ●米の生産が減り、田畑の多くは工場地となる

→半分あたって半分外れているような・・・。確かに最近米の生産量は減ってきているが、1920年からしてみたら生産性が上がったという意味では生産量は大分増えていると思う。工場は輸送に便利な海沿いの埋立地や山を切り崩した工業団地に作られることが多くなったが、田畑の多くは住宅地や商業地になったという点では当たっていると思う。山奥の村だと自然に還ってしまったところもあるが・・・。
 ●豚が主食となり1年に2億頭生産される。牛馬の多くは耕作用になる

→2014年の統計では日本国内では約974万頭が生産されているが、2億頭には遠く及ばない。主食にはなっていないが1920年からみたら随分食べる機会は増えていると思う。農業の機械化で牛馬はすっかり耕作用途から外れてしまった。
 ●社寺は大合併が行われ、有名な社寺のみ保存される

→明治の廃仏毀釈や神社の統合がさらに進むという意味で予測しただろうが、予想は外れている。2020年になっても大合併は行われていないだろう。もしそうなる機会があったとしたら終戦直後にGHQがやっていただろう。
 ●日本の仏教が統一される

→従来の宗派はそのまま残っているし、新宗教という形で仏教系の宗教がますます増えた。
 ●日本海トンネルの開鑿中に古代人の人骨が発掘され、朝鮮大学の鑑定の結果、100万年以上前の人骨と判明

→日本海にトンネルを掘る計画は未だ実現されていない。どのルートか分からないけど今でいう日韓トンネルのことかもしれない。100万年以上の人骨が発掘されるというのはないだろう。
 ●世界で使われる新しい暦が日本から発表される

→暦は1920年から変わっていない。新しい暦というのは皇紀のことだろうか。今は全然使われていない。
 ●鹿児島、山口、岩手は著しく知識が低下する。これは過去の公私横暴の結果である

→大正時代の首相の出身地が鹿児島、山口、岩手だからなのか名指しで批判されている。もちろんこの予言は当たっていない。他の予言が割りとあたっているのに、この予言だけ突拍子のないことを言っているのが気になる。

参考:2020年の日本 1920年から見た100年後



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