2015/09/19

Heia Safari! -僕の小規模な嘆きその70-

・古い古い軍歌の話 
レットウ=フォルベック(Paul Emil von Lettow-Vorbeck)というドイツの軍人がいた。
彼は第一次世界大戦中、ドイツの指揮官で唯一イギリス領に攻め込んだ軍人である。

簡単に彼の輝かしい功績を紹介しよう。
フォルベックは第一次世界大戦開戦当時、当時ドイツ帝国の植民地だったドイツ領東アフリカ(今のタンザニア)の植民地軍司令官だった。
植民地軍の規模は本国の軍隊よりはるかに小さく、本国から送られた士官&兵士+アスカリと呼ばれる現地採用の兵士で構成されていた。

世界大戦がはじまると、植民地の総督は戦うことを選ばず中立を取ることを考えた。
しかしフォルベックは総督に逆らい、まもなく上陸してきたイギリス軍をコテンパンにやっつけ、以後第一次世界大戦が終わるまでアフリカの大地で孤軍奮闘し続けることになる。

フォルベックが徹底抗戦を選んだのは、自分の立場を考えた時にこれがベストだと考えたからだ。
自分たちが遠いアフリカの地で戦い続けるほど、敵軍はヨーロッパ戦線からいくらか軍を送り込まなければならなくなる。
そうすれば、一進一退の攻防が続くヨーロッパ戦線でドイツ軍がいくらか戦いやすくなるだろう。そう考えたのだった。

効率よく、かつ敵になるべく損害を与えるべくフォルベック率いるドイツ軍は一か所に留まらず、あちこちを転々とする戦法をとった。
転々とすることで無駄な戦闘をさけ、かつ守りが手薄な要塞を攻めこんではそこにある武器弾薬や食糧を手に入れることで、持久戦を可能とさせたのである。
また、フォルベックは部隊内の士気維持にも心を砕いた。見下されがちなアスカリにも本国の兵士並みに扱い、無駄死にさせないように気を配った。

ドイツは結局降伏するが、フォルベックはとうとう最後まで戦い続けた。
降伏し、本国に帰還したフォルベックらは、住民の大歓迎を受けたのであった。

そんな彼を称えた歌が1921年に作られた。Heia Safari! (いざ狩猟へ!)という曲だ。



以下にドイツ語版と英語版、その脇に日本語訳をつけてみた。
日本語訳はあまりに稚拙すぎるため、こういう雰囲気の歌なんだくらいに解釈して欲しい。

ドイツ語版

Wie oft sind wir geschritten 
Auf schmalem Negerpfad 
Wohl durch der Steppen Mitten, 
Wenn frueh der Morgen naht. 
Wie lauschten wir dem Klange, 
Dem alten trauten Sange 
Der Traeger und Askari:
 Heia heia Safari! 


Steil ueber Berg und Kluefte
 Durch tiefe Urwaldnacht, 
Wo schwuel und feucht die Luefte 
Und nie die Sonne lacht. 
Durch Steppengraeserwogen 
Sind wir hindurchgezogen 
Mit Traeger und Askari: 
Heia heia Safari! 


Und sassen wir am Feuer 
Des Nachts wohl vor dem Zelt,
 Lag wie in stiller Feier 
Um uns die naecht'ge Welt. 
Und ueber dunkle Haenge 
Toent es wie ferne Klaenge 
Von Traegern und Askari: 
Heia heia Safari! 


Tret' ich die letzte Reise, 
Die grosse Fahrt einst an, 
Auf, singt mir diese Weise 
Statt Trauerlieder dann,
 Dass meinem Jaegerohre 
Dort vor dem Himmelstore 
Es kling' wie ein Halali: 
Heia heia Safari!


英語版
How often did we passed  
Narrow native trailsAmid the wide savannah  
広いサバンナの真ん中の先住民の狭い小道を何度通ったことだろうか


When early dawn prevails  
We listened to the sound of  
The old and trusty songs of 
The porters and Askari 
明け方が広がる時、ポーターとアスカリの古くて頼りになる歌を我々は耳にした

Hurray! Hurray! Safari!  
いざいざ 狩猟へ!


Steep hills and fearful gorges  
Primeval forest's night 
険しい丘にぞっとする峡谷、原生林の闇、

The air is damp and muggy, 
Blocked from the sun's sweet light 
空気はじめじめしていて蒸し暑く、太陽の心地良い光からは遮断された

Through Steppe Grasses waves 
Our valiant troop advances 
With porters and Askari 
草原の波を横切り、我らが勇敢な隊はポーターとアスカリと共に前進するのだ

Hurray! Hurray! Safari! いざいざ狩猟へ!


We sat around the fire 
At night before the tent 
我々は夜テントの前で炎のまわりに座った

At peace, at rest, content 
The nocturnal world rejoicing 
平和で安らかで満足した夜の世界の喜びが

Across the darkened mountain 
Echoes are still resounding 
Of porters and Askari 
暗い山を越えて、ポーターとアスカリのこだまが鳴り響く

Hurray! Hurray! Safari! 
いざいざ狩猟へ!


When I go on my last trek  
The journey is far beyond 
私が最後の長旅に出る時、旅ははるか遠い

Come and sing to me the song 
Instead of mournful hymns, 
悲しみに沈んだ賛美歌の代わりにわたしの元へ来て歌ってくれ

To my hunter's ear 
Before the gates of heaven  
It sounds like the Halali (Announcing the end of the hunt) 
天国の門の前で私の猟師の耳もとに(聞こえる歌は)、狩猟の終わりの合図のように聞こえる

Hurray! Hurray! Safari! 
いざいざ狩猟へ!



ところでこの歌のリメイク版が第2次大戦中に作られている。Heia Safari!というとこっちの方が有名だ。
ロンメル将軍率いるアフリカ軍団の歌だ。
メロディーは同じだが、歌詞が全く違う。こちらのほうがかなり威勢がいい。
歌詞と日本語訳はこちら





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